14年ぶりの開通!熊野古道中辺路 幻の岩神王子を訪ねる!

世界でも数例しかない道の世界遺産であり、1000年を超える歴史を持つ熊野古道。

その中でも熊野詣のメインルートとされた「中辺路(なかへち)」はトレッキングルートとしても大人気の道。国内外から訪問者が絶えない中辺路ですが、これまで14年にわたり閉ざされていた区間があるのはご存知でしょうか?


熊野詣の最初の目的地である熊野本宮大社よりも15kmほど手前「仲人茶屋跡(なこうどちゃやあと)~蛇形地蔵(じゃがたじぞう)」までの約3.5kmの区間です。

この区間は平成23年の台風12号の影響により通行止めとなり、長きにわたり歩くことができなくなっていましたが、地元自治体や地域の関係者の方々の尽力により、この度復旧作業が終わり14年ぶりに通行が再開する運びとなりました。


今回、同区間の開通を記念して「語り部の会熊野古道中辺路」の山田会長及び復旧作業に携わった「中辺路町森林組合」の岡上元組合長と歩いてきました。


皆様もぜひ本記事をご覧いただき現地をご訪問ください!

14年ぶりの開通!熊野古道中辺路 幻の岩神王子を訪ねる!

旅路は仲人茶屋跡からスタート!

  • 「復旧した区間は綺麗な道が残っており、とても気持ちよく歩くことができます」と山田さん

旅のスタートは仲人茶屋跡から。

かつて茶屋があったこの場所は、手前の坂が女坂(めざか)、これから登っていく坂が男坂(おざか)であることから、「仲人茶屋」と呼ばれていたとのことです。


男坂はつづら折れの急な上り坂。息を切らしながら岩神峠の頂上を目指します。雰囲気のよい男坂を登っていきます

14年ぶりにお目見え!幻の岩神王子へ

  • 岩神王子跡

男坂を30分ほど登ると一気に視界が開け岩神峠に到着。そしてそこには岩神王子跡が。

平安時代の貴族の日記「中右記」にも「石上」(いわがみ)とその名前が紹介されています。


疲れを忘れさせるほどの眺望が開け、かつての参詣者もこの景色を愛でたのかと思うと感慨深い気持ちになります。

復旧作業がなければこの景色に出会えなかったと思うと、尽力された関係者の皆様への感謝の言葉が尽きません


域内の間伐材を用いて、手作業での復旧作業

  • 手作業で修復された丸太橋

岩神王子を越えるとここからは湯川王子まで下り基調の道が続きます。

そしてここからの道の特徴が随所に出現する木の丸太で復旧された道々。


この辺りは、世界遺産に登録されているとともに、山深い地形でもあるため、重機を使っての復旧作業が難しく、全て人力で倒木を撤去したり、階段や木橋の補修作業を行わなければなりません。

その作業の中心的役割を果たしたのが当時中辺路町森林組合の組合長であった岡上さんです。


「道を直す方法はほとんど人力です。そして一番大事なことはやっぱり材料を提供する人。この山を持っている人。その方たちの許可を得て、間伐材を使わしてもらってこれらの道を直しました。その材料がなかったらきっとまだ道は直ってなかったと思います。」 


手作業での復旧作業


適切な間伐を行うことで、残った木は幹が太く枝葉がしっかりとした木に育つため、樹木の健全な成長促進のためには間伐が欠かせません。

そして今回、これらの間伐材を廃棄することなく再利用することで、14年ぶりの古道復旧が実現しました。


49番の番号標を過ぎるとまもなく復旧区間の終わりを迎えます

最後は三越峠へ

49番の番号標を越えさらに歩いていくと、ほどなくして湯川王子へ。そして湯川王子を越えると道は再び上り坂に。

20分ほど登ると、東屋の休憩所がある三越峠に到着です。

休憩所にはトイレも整備されています


熊野本宮大社までの道のりはまだまだ続きますが、本日の旅路はここまで。

最後に山田さんと岡上さんに熊野古道の魅力を語っていただきました。


一言で熊野古道と言っても、都市の風景があったり、田舎の山道の風景があったり、あるいは海が見えるすごい綺麗なところがあったりといろんな景色があるのが熊野古道の魅力じゃないかなと思います。私は巡礼が大好きなのですが、熊野古道を歩いていると、普段の疲れや日常などを忘れ、次第に歩くことに集中してきて、とても気持ちよくなります。いろんな人にぜひ歩きに来てもらいたいですね(山田さん)


熊野古道は素晴らしいです。勉強すればするほどその深みも分かってきます。どこに行っても水も緑も綺麗。東北とか日本全国いろんな場所からたくさんの人が来ますが、皆さん「紀州の山々は美しい」と言ってくれます。木がまっすぐ伸びていて、緑が濃いと。林業家としてこんなに嬉しいことはないですね(岡上さん)



お二人が語る熊野古道の魅力。皆様もぜひ体感しに熊野古道ウォークにお越しください!

本区間を歩くためのアクセスについて

この区間は山深い道中にあるので、ピンポイントで歩くのは地元の方でない限り現実的には少し難しいです。

周辺に駐車場もないため、原則はバスでのアクセスになります。


一番のお勧めは、滝尻王子から熊野本宮大社までの40㎞の区間を1泊2日もしくは2泊3日でスルーウォークすること。

1泊2日での歩き方は下記のモデルコース例をご参照ください。


1日で歩くとしたら「野中一方杉バス停」で下車し、継桜王子から熊野本宮大社まで歩くコースで約22km、「道湯川橋バス停」で下車し、仲人茶屋跡から熊野本宮大社まで歩くコースで約17kmのウォークになります。また、熊野本宮大社まで歩かず、発心門王子でバスに乗る形にすると距離は7kmほど短くなります。


本区間を含むウォークマップもご参照ください

本区間に関係するモデルコース例

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