世界で唯一の入浴できる世界遺産。熊野詣の歴史を今に伝える「湯の峰温泉 つぼ湯」

本記事は、年間300湯以上めぐる温泉専門家・北出恭子さんの監修のもと、和歌山県内の名湯を独自の視点で紹介するシリーズです。北出さんが実際に県内の温泉地を巡り、泉質や健康・美容への効果を専門的な目線で解説します。今回は田辺市にある「湯の峰温泉 つぼ湯」を訪ね、その神秘的な魅力に迫ります。

世界で唯一の入浴できる世界遺産。熊野詣の歴史を今に伝える「湯の峰温泉 つぼ湯」

写真には映らない、研ぎ澄まされた聖地の気配

熊野の山あい、川のせせらぎに包まれた温泉郷に佇む湯の峰温泉 つぼ湯。ここは、「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として世界遺産に登録されている、世界で唯一の「入浴できる世界遺産」です。建物の戸を開ける前から、周囲の空気が研ぎ澄まされていることに気づかされます。

熊野詣の前に身を清めた、蘇りの湯

つぼ湯は古くから、熊野詣を行う参拝者たちが、熊野本宮大社を訪れる前に身を清める「湯垢離場(ゆごりば)」として使われてきました。長い旅路の疲れをここで癒し、心身を清め整える“湯垢離(ゆごり)”をしてから、神聖な場所へ向かう。その役割は、今も変わらず受け継がれています。また、死の淵から蘇ったという「小栗判官(おぐりはんがん)伝説」の舞台としても知られ、現代でも「蘇りの湯」として多くの人々の心身を癒しています。

泉質のプロ!温泉家・北出恭子さんが語る

湯の峰温泉の公衆浴場で受付を済ませ、番号札を受け取ったら準備完了。つぼ湯は「30分交代の完全貸切制」となっており、自分たちだけの特別な時間を過ごせるのが魅力です。
およそ1800年前に開湯されたと伝わる “世界で唯一の入浴できる世界遺産”「つぼ湯」は、天然の岩の窪みが湯壺となり、湯底から源泉が自然に湧出しています。その日の気候や湧出量などによって湯の色が七色に変化すると言われる、まさに神秘の湯です。訪れるたびに異なる表情を見せる、一期一会の温泉。それが、つぼ湯の本質です。
泉質は、含硫黄–ナトリウム–炭酸水素塩・塩化物泉。この日は、青白いにごり湯で白や黒の湯の華が舞っていました。
硫黄(硫化水素ガス)の香りがしっかりと感じられ、サラサラとした肌ざわり。硫黄成分が血管を拡張して血行を促進するため、温熱作用が高いだけでなく、老廃物の排出を助けるデトックス効果も期待できます。さらに、硫黄成分によるメラニン生成を抑制するとされる美白効果や重曹成分などによる角質ケア効果もあり、“お肌を清める湯” としても期待できます。

川音と灯りに包まれる、ノスタルジックなひととき

日が落ちると、石畳の小径とつぼ湯にやわらかな灯りがともります。川のせせらぎ、立ち上る湯けむり、そして静寂。

一人ぶんの小さな湯舟ですが、そこに流れている時間は、とても贅沢。悩みがふっと小さく感じられる瞬間が訪れます。
 
 

湯の恵みを味わう、名物の温泉卵

つぼ湯のそばには、「湯筒(ゆづつ)」と呼ばれる高温の源泉が湧き出すスポットがあります。売店で購入した卵を、温泉の熱にそっと預けて待つ時間。湯気に包まれながら茹で上がった卵は、黄身がとろりとやわらかく、どこか懐かしい味わいです。入浴の前後に気軽に体験できる、湯の峰温泉ならではの楽しみのひとつです。

こんな方におすすめ

  • 忙しい日常から離れ、心を落ち着けたい方
     
     

  • パワースポットや歴史ある聖地に惹かれる方
     
     

  • 一人で静かに自分を見つめ直し、リラックスしたい方
     
     

  • 世界で唯一の「入浴できる世界遺産」を実際に体験したい方

まとめ|入浴できる世界遺産という価値

熊野詣の文化とともに受け継がれてきた温泉に浸かることで、この場所の価値をより深く実感することができます。次の旅は、“入浴できる世界遺産”を体験してみてはいかがでしょうか。


温泉家 北出恭子(おんせんか・きたできょうこ)

国内外の温泉を年間300湯以上めぐる温泉専門家。多数の温泉資格や知見を活かし、数多くのメディア出演や講演、インフルエンサーとして、温泉の魅力を世界に発信している。また、 “利き湯”による分析・評価ができる泉質のスペシャリストとして、行政や温泉地自治体と連携し、温泉資源を活用したコンテンツの監修や泉質を活かした温泉地づくりのアドバイスを行う。大学講師や観光行政の委員も務めている。

本記事で紹介した温泉地・施設

湯の峰温泉 つぼ湯
湯の峰温泉の一角、湯の谷川沿いに佇む「つぼ湯」は、自然石をくり抜いた浴槽をもつ小規模な貸切温泉です。30分ごとの交代制で利用される…
湯の峰温泉 つぼ湯
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