蘇りを願って異郷の地へそこはわが魂のふるさと
熊野本宮の湯垢離場として栄えた日本最古の湯「湯の峰温泉」。風情豊かなつぼ湯は、熊野を蘇りの地としてその名を世に広めた伝説「小栗判官」の舞台でもある。その昔、様々な罪を犯した小栗は、妻照手の父に毒殺され地獄行きに。閻魔大王のはからいで現世へ這い戻るも、その姿は見るも無残な餓鬼の姿であった。藤沢(神奈川県藤沢市)で土車に乗せられた小栗は、人々に引かれながら熊野の地を目指す。道中、照手姫も餓鬼を小栗と気づかぬまま車を引いたという。そうしてようやく辿り着いた湯の峰温泉。四十九日の間、つぼ湯に浸かると徐々に快方に向かい、小栗はついに元の姿を取り戻し、再び照手姫と結ばれた。一度死に蘇ったのち穢れを負うも再生する。小栗伝説にはまさに熊野信仰の真髄が込められている。 神々の地「熊野」その美しく大きな自然に抱かれる
川の熊野古道・熊野川を舟で下れば、終点は新宮市街地。街の北に壁のようにそびえる山(権現山)に導かれ、足がすくむほど急峻な石段を登り切ると、熊野速玉大社の摂社・神倉神社が鎮座する。その御神体は、ゴトビキ岩と呼ばれる巨大な岩。熊野の神々が最初に降臨したといわれる巨岩の圧倒的な存在感に言葉を失う。 となり町・那智勝浦で出会えるのは、日本一の落差を誇る那智の滝。ごうごうと唸るように響く瀑声や肌に触れるひんやりとした心地良い空気。神々しいまでの滝に直面し感じるのは、巨大な大地のエネルギー。形を変えながら流れ続ける水は、生命の輪廻すら感じさせる。ダイナミックで神聖な熊野の自然に触れて、身も心もリフレッシュしたい。
日は沈み、また昇る再生を願わずにはいられない 群青色に輝く美しい海と、異世界を思わせるダイナミックな風景が広がる本州最南端の町、串本。太古からの火山活動や波の侵食で生み出された橋杭岩や海金剛。その姿は、荒々しくも神秘的である。またこの辺りは古くからの海上交通の要衝であり、流れが速く風の強いその沖合は、航海の難所として知られてきた。しかし、美しい海岸線に降り注ぐ陽光は、旅人を陽気にしてくれるように、力強くも優しい。さらに潮岬は、本州最南端がゆえ、海から昇る朝日と海に沈む夕日を眺めることができる奇跡の場所である。それは地球創世記から永遠に繰り返される再生の物語。不変的な景観と、時によって姿を変える景色。和歌山の自然の大いなるパワーをぜひ感じてみて。
壮大な海景と名湯可愛いパンダに癒やされる 癒やしのバリエーションが豊富で風光明媚なリゾート地、白浜。中でもおすすめは日本屈指の白く美しい砂浜と目の覚めるようなコバルトブルーの海。また1500万年前の地層が生み出すダイナミックな地形や、日本書紀にも記される日本三古湯のひとつ白浜温泉も見逃せな い。さらに外せないのが不動のアイドルとして愛されているパンダファミリーだ。愛くるしい姿を存分に愛でたら、町歩きも旅のおすすめ。のどかな海辺の風情や温泉地ならではの趣など、町内で異なる魅力を発見でき、海風や温泉の香りにまた心が和む。山海の恵も味わい深く、海を眺めながらの食事や潮風を感じる湯浴みなど、組み合わせることで癒やされ度合いもひときわ高まるはず。
日本最古の英雄譚「神武東征神話」と地元豪族・名草戸畔をたどる旅 初代天皇神武天皇・カムヤマトイワレビコの、日本建国への道のりを壮大なスケールで描いた「神武東征神話」。和歌山市は、長兄・イツセが負傷し、死の間際に痛みと無念で雄叫びをあげた地・水門吹上(みなとふきあげ)神社、その御霊を葬る竈山(かまやま)神社と、物語の舞台が残る。イツセの死後、名草邑(現在の和歌山市名草山周辺)の豪族・名草戸畔率いる民と戦い、一行は天皇誕生へとつながる運命の地・熊野へ向かう。戦死した名草戸畔の体は、頭・胴・足に分けられ、海南市のつの神社に祀られていると伝わる。これらの神社は今もなお地域の守り神として信仰を集めている。日本誕生の経緯を紐解きながら、変わらぬ自然の中に息づく神々を訪ねる旅に出かけてみてはいかがだろう。
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