【Birdingを楽しむ和歌山旅】
歌え、詠え! “和歌の聖地”は水鳥たちのパラダイス
2026年5月29日発売のトラベル・ライフスタイル誌『PAPERSKY』no.74で、和歌山県を紹介する記事が掲載されました。
特集テーマは、Birding(バーディング)。この記事で紹介するのは、万葉集にも詠まれた歴史ある景勝地や絶景の海岸美、新鮮な海の幸が楽しめる「和歌の浦エリア」。
美しい海と歴史情緒あふれる街並みがぎゅっと詰まったルートは、どこを切り取っても絵になり、カメラ片手にのんびり散策するのにぴったりです。
和歌山市街の南、和歌川河口に広がる干潟を中心とする和歌の浦は奈良時代からさまざまな歌の題材となった絶景の宝庫。今日も干潟に水鳥たちが舞い降りる。

万葉の歌人も水鳥も。歌好き大集合
若の浦に 潮満ち来れば 潟をなみ
葦辺をさして 鶴鳴き渡る
そう歌ったのは、『万葉集』でおなじみの“万葉の歌聖”こと、山部赤人だ。潮の満ち引きによって現れては消え、消えては現れ、刻一刻と変化する干潟の情景。その風景は山部赤人他、時のインフルエンサー(歌人や貴族)たちを虜にし、数多くの流行歌(和歌)のテーマになった。そして現在、この干潟はまったく別の歌い手たちを惹きつけている。
「あ、ほら、あそこ! イソヒヨドリですね。その横はハクセキレイ、耳を澄ましてみてください。可憐な声でしょ? 消波ブロックに止まっているのはタヒバリ。その向こう、中洲にいるのはアオサギですね」
海水浴場沿いに整備された日本庭園を、双眼鏡を片手にのんびりと歩きながら、バードウォッチング歴40年超の中川守さんは周囲にいる鳥を次々と識別していった。
え、どこ? あ、あの茶色の子? こちらがまごつく間にも中川さんの双眼鏡はさらに別の種を捉えていく。片手にマイクとレコーダー、反対側の手で双眼鏡を握るサウンドクリエイターのNagipanさんも、夢中でレンズを覗いている。
西海岸発「Nocs Provisions」の双眼鏡はスマートフォンの望遠レンズとしても使えるように設計されており、“Birding”に最適
現在の和歌の浦周辺は、干潟に集まる水辺の野鳥を観察できるバードウォッチングのパラダイス。和歌浦バス停から「和歌の神さま」こと玉津島神社を散策し、水上に浮かぶ観海閣を経て片男波公園へ。
江戸時代に架けられたアーチ形の不老橋から紀州東照宮に上り、壮大な楼門で有名な和歌浦天満宮にお参りし、360度のパノラマが広がる高津子山へ―というのが、今回の水鳥観察ルートである。
万葉の時代から詠い継がれた風景
スタートは玉津島神社の境内にある鏡山と、神社の裏手にある奠供山。万葉の時代から天皇が熊野詣でに際して必ず立ち寄っていたという小高い山の上からは、和歌の浦の干潟と周囲の山々を一望できる。
眼前の潟は近畿地方最大級の規模を誇り、約300種の生物が共生する多様性に溢れた環境だ。
天皇や公家たちが和歌の上達を祈願したという玉津島神社
ゲストに迎えたNagipanさんは2年前、古民家暮らしに憧れを抱き、兵庫県から和歌山市のはずれの集落に移住を果たした。現在の住まいは「まわりに気兼ねすることなく、好きなだけ音楽をかけられるのがすばらしい」というが、それはつまり周辺の鳥や動物の鳴き声だったり風に揺れる木立の音だったり、自然が奏でる音やリズムを堪能できる環境をも意味している。
Nagipanさんと奠供山から和歌の浦を眺めていると、周辺の木立からさまざまな歌が聞こえてきた。「よく響く『ヒーヨヒーヨ』はヒヨドリ、流れるようなさえずりはメジロ、『ビィービィー』と小さい声で鳴いているのはヤマガラ」と中川さん。
「鳥の声をレコーディングすることはあるけれど、その声の持ち主たちが一体どんな姿をしているのか、これまで意識したことがなかったなあ」とNagipanさん。双眼鏡を渡したら、レンズ越しに見える鳥たちの姿にすっかり心を奪われたようだ。
ローマ|立ち寄りどころ
食パン型の外観がかわいいパン店「ローマ」は惣菜パンの種類が豊富。街歩きのおやつを探しに足を延ばそう。
1997年に惜しまれつつも閉店してしまった「イズミヤパン」といえば、和歌山県民のソウルフードならぬソウルパン。その流れを汲む「ローマ」では「イズミヤパン」で人気を博した懐かしい味を再現している。ふんわり柔らかな生地にたっぷりの生クリームとミカンやパイナップルの果肉を挟んだ「フルーツパン」はその代表格だ。
その数300超! 干潟は野生動物の楽園
小高い山を降りて観海閣方面に歩き、干潟に来る鳥を観察する。玉津島神社からわずか数百メートル離れただけなのに、干潟のメンツはがらりと変わる。真っ白なダイサギ、グレーがかったアオサギ、マガモ、浜にいるのはイソヒヨドリ。
潮の満ち引きによって潟が現れたり消えたり、刻々と姿を変える干潟の状況に伴って姿を現す鳥も、聴こえくる鳴き声も変わってくるというから、干潮時と満潮時で異なる鳥に触れられるのが和歌の浦のおもしろさである。
「鳥たちをよく観察したいなら、彼らの生態と周囲の環境を知ることがいちばん。気候のこと、地層や風、彼らのエサやその生態、こうした環境に鳥たちがどう適応しているのか。鳥が生息する自然のなかに彼らの手がかりを発見できますよ」(中川さん)
「鳥の声を聞いてその姿を見ることで、自分たちを取り巻く自然環境への理解を一歩深めることができた気がします」とNagipanさん。想像以上に奥深く、いろいろな気づきをもたらしてくれる鳥たちの営み。和歌山全土を旅しながら鳥を見て、聴いて、感じて、表現する“Birding”の旅はまだまだ続く。
春栄堂|立ち寄りどころ
和歌山県人が愛するスイーツといえば、1925年創業の「春栄堂」のシューパリ。パリッとした食感のシュー皮とクリームのコントラストが絶妙!
和菓子店として1925年に誕生した「春栄堂」。名物の「シューパリ」を生み出したのは、3代目オーナーパティシエの南克勲さん。スタンダードな「シューパリ」以外に、イチゴ、抹茶、生チョコレートなどのフレーバーがラインナップ。
高田耕造商店|立ち寄りどころ
和歌の浦散策の後に車に乗って出かけたい、たわし専門店「高田耕造商店」。国内外のシュロから厳選した繊維を、職人が手作業でたわしに仕立てる
兵庫県出身。サウンドクリエイター。MICHEL☆PUNCH名義の活動を経て2020年よりNagipanとして活動をスタート。2024年に和歌山県へ拠点を移す。今春、同じく和歌山を拠点とするEVISBEATSとのコラボアルバム『岡潔(Oka Kiyoshi)』『三三三 – Sanmai』をリリースした。
WAKANOURA BIRDS
干潮前後を狙って出かけよう
<鳥の鳴き声を聴く>
コサギ
イソシギ
ミサゴ
識別のヒントは生息場所と行動パターン
干潟、浅瀬、岩礁がコンパクトにまとまった和歌の浦で見かける代表的な野鳥がシギ類。波打ち際を群れで移動するのがハマシギ、岩場や護岸を、尾を上下に振りながら移動するのがイソシギ。岩場にいる黄色い脚の持ち主はキアシシギ、長く湾曲したくちばしをもつチュウシャクシギというように、小型から大型までさまざまなシギ類が生息する。干潮前後の時間帯を狙って双眼鏡を構えてみよう。
温暖な海岸に生息するイソヒヨドリは、海辺の岩場で見かける、全身がブルーで腹部がレンガ色のおしゃれなツートーンが目印。ただしこれはオスの外見で、メスはといえば全身が灰褐色に覆われた地味な見た目。「磯に生息する、ヒヨドリに似た見た目」=イソヒヨドリなので簡単に覚えられそうだ。一方、和歌の浦の見せ場をつくるのが海辺の猛禽類、ミサゴ。魚を狙ってダイブする姿を見られるかも。近距離で観察できるので、行動パターンや群れの動きに注目するとおもしろさがアップ!
Route Guide
春栄堂
和歌山県和歌山市和歌浦中1-5-13
TEL:073-444-0571
焼きたてパンの店 ローマ
和歌山県和歌山市湊1825-3
TEL:073-455-8133
本特集は、トラベル・ライフスタイル誌「PAPERSKY」no.74とのタイアップ記事です。

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