わかやま観光｜わかやま記紀の旅　緑豊かな紀伊国を創りし木の兄妹神

天磐戸の騒動が一件落着したのち、高天原[たかまがはら]（天上界）の神々は相談し、乱暴を極めたスサノオを高天原から追放することにしました。スサノオはやがて出雲国に降臨し、ヤマタノオロチを退治します。このときヤマタノオロチのしっぽからひと振りの宝剣を得るのですが、これが三種の神器のひとつ、天叢雲剣[あめのむらくものつるぎ]（のちの草薙剣[くさなぎのつるぎ]）です。
出雲国への降臨については、日本書紀に別の話も伝わっています。スサノオは息子のイタケルを連れて初めは新羅（当時の朝鮮半島にあった国のひとつ）に降臨します。しかしその地が気に入らず、海路で出雲国へ入ったというのです。このイタケルは、スサノオとともに最初に降臨した際、たくさんの樹木の種を持っていました。その種は新羅の地では育たなかったため、種を持って日本へ戻り、筑紫国（福岡県）あたりから順にその種を蒔き、日本列島を緑なす国へと変えていきました。そうして最終的に、紀伊国にたどり着いたそうです。
これが紀伊国のルーツといわれています。古事記では、紀伊国を「木国」と表記しています。当時から和歌山県は、木の豊富な地域として知られていたのでしょう。

イタケルには、オオヤツヒメとツマツヒメという妹神がいました。彼女たちも兄と同じように、たくさんの樹木の種を蒔いたそうです。紀伊国に鎮座したイタケルは和歌山市にある伊太祁曽神社に祀られ、木の神として崇められています。また妹神二神と合わせ、三神は全国の林業関係者から伊太祁曽三神と呼ばれており、この地が木の神の住む国、つまり木の国、やがて転じて紀伊国となったそうです。
日本書紀第五巻の異伝では、スサノオと樹木に関する記述もあります。降臨したスサノオは「日本に浮宝[うくたから]（船）がないのはよくない」と言って、ひげを抜いて蒔くとそれが杉になったそうです。また胸毛は檜になり、尻の毛は柀[まき]（槙）に、眉毛は楠にと、たくさんの種類の樹木を生み出します。そうして杉と楠は船の用材に、檜は宮殿の用材にせよ、木の実をたくさん蒔き植え食料とせよと言ったのでした。

[和歌山市]緑豊かな「木国」のルーツ

都麻津姫[つまつひめ]神社

イタケルの妹神を祀る

姉神のオオヤツヒメとともに兄イタケルを助け、日本中にたくさんの樹木を植えたツマツヒメ。全国で植樹したのちに紀伊国に鎮座し、地域最古社の御祭神として祀られている。ツマは建築用材を意味するとも考えられることから、建築の神様としての崇敬も篤い。

★スタンプ設置ポイント
TEL:073-478-3487
住所:和歌山市吉礼911
定休日:参拝自由
駐車場:5台

伊太祁曽[いたきそ]神社

イタケルを祀る森の中の宮

紀伊国に鎮座したイタケルはその後、この地に御祭神として祀られた。神社の脇殿には、オオヤツヒメ、ツマツヒメも祀られている。境内にはイタケルの荒御霊[あらみたま]（荒々しい魂）を祀る氣生[きしょう]神社もあり、併せて参拝したい。森に囲まれた境内は、まさに木の国の雰囲気。

TEL：073-478-0006
住所：和歌山市伊太祈曽558
定休日：参拝自由
駐車場：30台

髙積[たかつみ]神社

兄妹三神がともに主祭神

中央にオオヤツヒメ、左右にイタケル、ツマツヒメと、兄妹三神を主祭神として祀っていることから、「高三所[たかさんしょ]大明神」とも呼ばれている。地元の産土神[うぶすながみ]として信奉されており、標高237mの高積山の麓に三神が鎮座する下の宮（写真）、そこから山を登った場所に上の宮の本殿があり、静謐[せいひつ]な雰囲気が漂う。

TEL：073-477-0860
住所：下の宮／和歌山市禰宜1390
定休日：参拝自由
駐車場：なし

伊太祁曽[いたきそ]神社にある鳥上峯[とりがみみね]の石

祇園神社への石段を登っていくと、社殿の手前左側にひっそりと石が佇む

樹木の種を持って新羅から出雲へ向かったスサノオとイタケルは、最初に鳥上峯と呼ばれる場所へ降り立ったと伝わっています。伊太祁曽神社境内でスサノオを祀る祇園神社の石段横には、その鳥上峯の石を運び、祀ってあります。苔むした姿を見て、遠く神話の時代へ思いを馳せてみませんか。

スタンプ設置ポイント周辺のおすすめスポット

Nature Café M's Nest

自然素材で作る絶品米粉シフォンケーキ

元々ガソリンスタンドだった場所を改装したベジタリアンカフェ。ランチの定番である薬膳カレーのほか、食後には米粉で作ったふわふわのシフォンケーキセット（850円）も。

TEL：073-488-2805
住所：和歌山市冬野536-1
時間：11〜17時（16時LO）、土・日曜は〜18時（17時LO）
定休日：水曜（GWは営業）
駐車場：10台

青空社