熊野古道中辺路ロングトレイルの歩き方 〜人生変わる歩き旅。蘇りの聖地「熊野三山」スルーハイク〜

熊野三山を目指すためのメインルートで熊野参詣に最も頻繁に利用された道である「熊野古道中辺路」。その起源は千年以上昔に時の上皇や法皇が熊野を目指した「熊野御幸(くまのごこう)」まで遡ります。険しい道のりを経て熊野三山を参ることで過去・現在・未来の安寧が得られ「生まれ変わる」と信じられた熊野詣は、やがて貴族から武士、庶民へと広がり、江戸時代には「蟻の熊野詣」と呼ばれる一大ブームに。そして今もなお、熊野への巡礼は、祈りと蘇りの旅として人々の心を惹きつけています。

自然と里の文化、そして千年を超える歴史に深く浸り、己自信と向き合いながら聖地を目指す壮大なスルーハイクは、まさに生きながらにしての「蘇り」の体験。あなたの人生が変わる7日間の歩き旅に出発しましょう。


※本モデルコースでは、全長約140kmを6泊7日で歩けるように紹介します。

※中辺路ルート上の宿泊情報はこちらからご確認ください

※中辺路ロングトレイルのお役立ちツールとして、和歌山県街道マップを準備していますので、詳細はこちらからご確認ください

所要時間
7泊8日
移動手段
徒歩
熊野古道中辺路ロングトレイルの歩き方 〜人生変わる歩き旅。蘇りの聖地「熊野三山」スルーハイク〜
Start
1日目

紀伊田辺駅〜滝尻王子(総歩行距離:24.6km)

~街から山へ、移ろう景色のグラデーションを感じる旅の始まり~

熊野古道の代名詞ともいえる中辺路。現在は紀伊田辺駅から25km先にある滝尻王子から歩き始める方が多いですが、本来の起点は紀伊田辺駅近くにある「道分け石」です。まずは世界遺産の闘雞神社(とうけいじんじゃ)で旅の安全を祈願した後、古(いにしえ)の旅人と同じようにここ「道分け石」から壮大なロングトレイルのスタートを切りましょう。市街地の喧噪を抜け、王子跡を辿りながら次第に景色は里の風景に。舗装路中心に10km強歩くと、稲葉根王子(いなばねおうじ)に到着。かつて稲葉根王子では、身を清めるための儀式「水垢離(みずごり)」が富田川(とんだがわ)の清らかな水を用いて行われました。稲葉根王子からは、清流富田川の傍目を歩きながら滝尻王子までの道が続きます。賑やかな「街」から、人々の暮らしが息づく「里」、清らかな「川」、そして神域である深い「山」へと、徐々に景色が移ろうグラデーションを体感できるのがこの区間の最大の醍醐味です。

2日目

滝尻王子〜近露王子(総歩行距離:13km)

~熊野三山の霊域へ。古道の核心部へ挑む一日~

滝尻王子から熊野本宮大社を目指す道のりは、本格的な山歩きを楽しめるセクションハイクとしても人気のあるコースです。まずは滝尻王子の対岸にある「熊野古道館」に立ち寄り、これから歩く中辺路の歴史や文化を予習してから出発しましょう。 数ある王子の中でも特に格式の高い「五躰王子(ごたいおうじ)」の一つである滝尻王子を参った後は、いきなりの急坂に挑みます。険しい山道を越えながら標高を上げた先に待っているのが「霧の里」と呼ばれる高原(たかはら)です。ここでは視界が一気に開け、果無(はてなし)山脈を見渡す大パノラマが旅人の疲れを癒してくれます。再び森に入り、アップダウンを繰り返しながら大門王子、十丈王子、大坂本王子と3つの王子を参ると、ほどなくして道の駅へ。道の駅で少し休憩した後、再び歩き始めるとすぐに中辺路のシンボル的存在の牛馬童子像に出会えます。牛馬童子像から本日のゴールである中辺路の宿場町・近露(ちかつゆ)はもうすぐです。 なお、近露エリアは民宿やゲストハウス、キャンプ場などが点在する宿泊の拠点ですが、ハイシーズンは非常に混み合いますのでご注意ください。

※近露から4kmほど進んだ継桜王子周辺でも宿泊は可能です。ただし、宿数は近露より少ないのでご注意ください。

※近露にはテント泊可能なキャンプ場があります(アイリスパークオートキャンプ場)。

3日目

近露王子〜熊野本宮大社・大斎原(総歩行距離:25.7km)

~熊野詣最初の目的地に到着。未来の加護を祈り、温泉で疲れを癒す~

宿場町・近露を後にし、熊野詣の最初の目的地である熊野本宮大社を目指します。「熊野三山を参ることで過去・現在・未来の安寧を得ることができる」とされていますが、熊野本宮大社は「未来」を司る聖地。参ることで未来のご加護が得られるとされています。この日は距離が長く複数の峠を越えながら歩く厳しい一日となりますが、その分熊野本宮大社に到着したときの喜びは格別なものになるはずです。

小広王子までの約7kmは舗装路が続きますが、以降は一転して深淵な山の中へ。 途中の岩神峠は、2025年に14年ぶりに通行止めが解除された道。再生した古道の息吹を感じながら歩き、三越峠ではちょっと一息して昼食休憩を。その後、下り基調の道を4kmほど進むと、五躰王子の一つ発心門王子に到着。発心門王子は熊野本宮大社の神域の入口。ここから熊野本宮大社までは「中辺路のゴールデンコース」と呼ばれるほどの人気コースです。たくさんの見所を経ていよいよ熊野本宮大社へ。熊野本宮大社の旧社地である大斎原(おおゆのはら)へも忘れず参拝に行きましょう。

参拝後は、ぜひ温泉宿へ。この地は「熊野本宮温泉郷」と呼ばれ、「川湯温泉」「湯の峰温泉」「渡瀬温泉」という3つの温泉地が集まる場所です。かつての熊野詣でも湯垢離場(ゆごりば)として栄えた由緒ある温泉郷で旅の疲れをたっぷり癒してください。

※川湯温泉にはテント泊可能なキャンプ場があります(田辺川湯キャンプ場)。

4日目

熊野本宮大社~熊野速玉大社・神倉神社(総歩行距離:20km(川の参詣道除く))

~古道は「歩く」だけじゃない。川の参詣道で辿る、いにしえの旅~

温泉で疲れを癒し朝を迎えたら、旅は新たなステージへ。この日は川の参詣道で熊野速玉大社を目指します。かつて上皇や貴族たちが舟を利用して熊野速玉大社を目指したように、熊野詣の伝統的なメインルートは、実はこの雄大な「熊野川」でした。水面から見上げる山々の圧倒的な高さ、川音だけの静寂。悠久の流れと一体になり舟に揺られると「熊野古道=歩く」という固定概念が良い意味で覆されるはずです。

川舟が出ている「川舟センター」までは各温泉地から20km弱程度の道路歩きとなりますが、バスも出ていますのでバス移動も選択肢の一つに。川舟センターからは舟に乗船。90分の舟旅の最後は、かつての参詣者たちがそうしたように熊野速玉大社の裏手にある河原「権現河原」へと上陸。河原から5分程度で熊野速玉大社に。朱色の鮮やかな社殿が美しい熊野速玉大社は「過去」を司る聖地。参ることで過去の罪や穢れが浄化されるとされています。そしてこの日の旅の締めくくりは、熊野の神々が初めて降臨したとされる「ゴトビキ岩」をご神体とする神倉神社へ。538段の石段を登った後に現れる巨岩と目の前に広がる新宮市街の絶景は圧巻の一言です。この日は新宮市街で宿泊と食事をお楽しみください。

※川舟の運行等詳細はこちらからご確認ください

5日目

熊野速玉大社〜熊野那智大社・那智山青岸渡寺・那智の滝(総歩行距離:22km)

~海の恵みを五感で感じて、熊野詣の最終目的地へ~

新宮を出発すると、これまでの「山」「川」の景色と一変して「海」中心の情景へ。那智駅までの約15kmは熊野灘の潮風を感じながら歩きます。道路歩きが中心になりますが、その中でも「高野坂」は昔の古道の雰囲気が色濃く残り、古道と熊野灘のコントラストも楽しめます。那智駅に到着して、もし時間と体力に余裕があるならぜひ勝浦漁港周辺へ足を伸ばしてみてください。勝浦漁港は、生マグロの水揚げ日本一を誇る漁港。市場周辺の食事処でいただく生マグロは、もっちりとした食感と濃厚な旨味が別格です。食事後は熊野古道に戻り、いざ三山巡りの最終地・那智山へ。 俗界と聖域を分かつような大門坂の石畳を踏みしめ、杉木立の中を登り切れば、熊野那智大社・那智山青岸渡寺、そして日本一の落差を誇る那智の滝が迎えてくれます。熊野詣の最終目的地である熊野那智大社は「現在」を司る聖地。参ることで現世の縁が結ばれるとされています。本宮で未来を、速玉で過去を祈り、最後にここで、今を力強く生き抜く生命力を授かることで、熊野三山の巡礼は成就します。最後に 滝の轟音を全身に浴びて魂を震わせ、明日から始まる「本宮への帰還」という新たな旅路に向け、精神を整えこの日の終わりを迎えましょう。

※2026年現在、那智山で宿泊を提供しているお宿は「美滝山荘」1件のみになります。ご予約にご注意ください。

6日目

那智山青岸渡寺〜小口(総歩行距離:14.5km)

~本宮への帰還初日。中辺路最難関の大雲取越へ~

那智の滝に見送られるように出発し、目指すは深い緑と清流に囲まれた隠れ里・小口(こぐち)。この区間は「大雲取越」と呼ばれ、その名が表すとおり、道中は雲の中を行くがごとき険しい山に分け入り、厳しい坂道を越える、熊野古道中辺路の中でも最難関とも言われているルートです。ただしその分歩きごたえがあるとともに、色濃く残る古道の雰囲気や、峠から望む美しい眺望など熊野古道随一の景観美を楽しむことができます。

スタート地点の那智山青岸渡寺から約4.5km先の船見茶屋跡までは登り基調の道が、そこからはアップダウンを繰り返し、約5.3km先の越前峠へ。越前峠からは、一気に下り道となり、約5kmの距離の間に800m以上を下る急こう配の道が続きます。そしてその長い下り坂を降り立った先が本日のゴール・小口です。山々に囲まれた小さく静かな集落に到着した瞬間、張り詰めていた緊張がふっと解けるのを感じるでしょう。地元の商店に立ち寄れば、店の方との何気ない会話や笑顔が、疲れ切った心身にじんわりと染み渡ります。

※小口にはテント泊可能なキャンプ場があります(小口キャンプ場)。

7日目

小口〜熊野本宮大社(総歩行距離:16km)

~本宮への帰還。長く険しい道の果てにつかんだ「蘇り」の実感~

小口で最後の夜を過ごし、静かな朝を迎えた後は、いよいよ本宮へと繋がる「小雲取越(こぐもとりごえ)」へ。 小雲取越は大雲取越と比べアップダウンも少なく、木立の中を気持ちよくハイキングできる道です。

このルート一番のハイライトは、遥かに連なる果無(はてなし)山脈の大パノラマが広がる「百間ぐら(ひゃっけんぐら)」の眺望。目の前の絶景を眺めながら、しばしこれまで歩いてきた道のりを振り返り、静かに佇む時間を設けてはいかがでしょうか。そしてそこから 山を下り、請川(うけがわ)を経て熊野川沿いを進めば、再び熊野本宮大社へ。ついにフィナーレの時です。 ゴール周辺で、地元の方と言葉を交わす機会があれば、ぜひこれまでの旅の話をしてみてください。「中辺路を歩き通してきました」。そう伝えた瞬間、驚きとともに向けられる温かい笑顔と労いの言葉。それらは、完踏した巡礼者に贈られる何よりの勲章であり、旅の疲れが喜びに変わる瞬間です。 本宮・速玉・那智。山を越え川を下り、三つの聖地を巡り、再びここへ戻ってきた今、あなたは何を感じるでしょうか。7日間の長い旅路で得た何物にも変えられない経験を携え、ここからまた、新しい日常への一歩がきっと始まることでしょう。

Goal

※Google Mapの読込みが1日の上限を超えた場合、正しく表示されない場合がありますのでご了承ください

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